漢方薬

体力回復の強い味方、十全大補湯の効果と活用法の解説

renoba
  • 元気が出ない、疲労感がつらい。
  • そんなあなたにはこちらがいいのかも!
  • 前回の補中益気湯に続き第二弾。あちらとの違いは…柴胡、陳皮と言った気の動きに関わる生薬が入ってるかどうかでしょうか?あとは今回の十全大補湯は血虚症状も伴っている部分があることでしょう。
    • 補中益気湯では補血生薬は当帰しかなかったので強化されたとも解釈できそうです。

十全大補湯(じゅうぜんだいほとう):48

  • 術後の体力低下、疲労倦怠感、食欲不振、寝汗、手足の冷え などに使用されます。
    • 元気がない・疲れやすい、手足が冷える、消化不良などによる軟便 などの気虚症状と、目のかすみ、皮膚や髪の毛のツヤがない・乾燥している、爪の変形、顔色が悪い などの血虚症状が見られます。

どんな薬?

構成生薬

  • 人参(にんじん)、炙甘草(しゃかんぞう)、茯苓(ぶくりょう)、白朮(びゃくじゅつ)、当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、熟地黄(じゅくじおう)、芍薬(しゃくやく)、黄耆(おうぎ)、桂皮(けいひ) で構成されています。
  • 四君子湯 + 四物湯 +黄耆 +桂皮 です。気虚と血虚の基本骨格に黄耆、桂皮が追加された方剤となっています。(四君子湯 + 四物湯 は八珍湯という方剤になっています。)

生薬ごとの役割

  • 四君子湯:気虚に対する基本方剤です。
    • 人参:代表的な補気剤です。消化管機能を助けて気を貯めこみつつ体全体の気を増やして疲労感を軽減したり抵抗力を高めてくれます。
    • 甘草:諸薬の調和を取ります。補脾胃しつつ津液の喪失を防いでいます。
    • 茯苓 + 白朮:利水薬の組み合わせです。消化管内の不要な水分を全身に巡らせつつ利尿します。補脾胃にも作用します。
  • 四物湯:血虚に対する基本方剤です。芎帰膠艾湯(生理などで出血が多い場合はこちら)から阿膠・艾葉・甘草を取り除いて止血作用を減らしたものになります。
    • 当帰 + 川芎:もとは芎帰湯と呼ばれている方剤セットで血虚に使われています。
      • 当帰は補血して全身の栄養状態を改善し、血の巡りを促進してくれます。、川芎は気を昇らせる作用があり、気を上へと昇らせる事で頭重感など軽減してくれます。
    • 地黄:滋陰(じいん)、補血作用があります。
      • 滋陰:陰が不足すると熱を冷ます力が低下して虚熱(きょねつ)となり火照り感が出てきます。詳しい話は別の回で。
    • 芍薬:筋肉に働きかけて鎮痛作用や芍薬甘草湯みたいに鎮痙作用もあります。川芎による副作用を軽減してくれる目的でも配合されています。
  • 人参 + 黄耆:2つの組み合わせで参耆剤と呼ばれ、2つの生薬がもっている補脾胃・補気作用が強くなります。
  • 黄耆:固表作用があり、皮膚表面から気が漏れ出ていくのを防いでくれます。汗が必要以上に出るのを防ぐ作用に繋がっています。多汗症、盗汗(寝汗のこと)がこれにあたります。
  • 桂皮:体表面を温める作用があります。
    • 八珍湯より更に補気作用と寒冷に対する作用が増強された方剤となっています。

注意点

  • 人参:怒りが溜まっているような方には人参が裏(体表面ではなく消化管など)に働きかけて気を貯めこむ力があるため酷い時は怒りが爆発してしまうそう。
  • 地黄:地黄が含まれており、お腹が重だるく感じることがあります。そのような場合には食前ではなく食後に服用すると軽減されることがあります。
    • 縮砂を入れて胃への負担を軽減する方法もありです。(煎じ薬の場合)
    • お湯に溶いて飲む場合は生姜をすりおろしたものを少し混ぜるのもある程度効果あります。

その他

褥瘡

  • 十全大補湯 + 亜鉛
  • 治りが早くなる。
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漢方を学んでいる薬剤師
"元"漢方薬・生薬認定薬剤師です。
漢方の魅力に取りつかれ漢方の魅力を発信しようと決意し、漢方のブログを書き始めました。
初心に帰って再度漢方を学んでいる真っ最中なので同じように漢方勉強したい方や漢方が気になる方に少しでも情報を届けられたらと考えています。
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