漢方薬

薬剤師国家試験で扱われた漢方薬

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薬剤師国家試験で問われたことのある漢方薬を確認していきたいと思います。

  • よく聞かれる麻黄(まおう)、甘草(かんぞう)、附子(ぶし) など成分的に知っておいた方がいいものや、副作用、その起源植物まで知っておいた方がいいだろう。
    1. このページでは勉強の真っ最中や試験前の薬学生向けに考えているため極力ふりがな多めにしています。考え方や覚え方などから番号順にしていません。
    2. 赤文字は温める生薬、青文字は冷ます生薬。アンダーラインが入っているものは注意が必要な生薬効果効能考え方 といろいろ分けています。
    3. 方剤名、構成生薬、適応(添付文書より抜粋)、方剤の考え方、覚え方、使い方 と記載していきます。重要な生薬成分は構造式も覚える必要があるので添付しておきます。
    4. 構成生薬について、各種メーカーにより若干の違いがあることがあるので注意してください。(蒼朮・白朮 を入れ替えているものもあり。)

麻黄湯(まおうとう):27

  • 麻黄(まおう) 桂皮(けいひ) 杏仁(きょうにん) 甘草(かんぞう)
    1. 悪寒発熱、頭痛、腰痛、自然に汗の出ないものの次の諸症:感冒インフルエンザ(初期のもの)、関節リウマチ、喘息、小児の鼻閉塞、哺乳困難。
    2. 麻黄と桂皮の組み合わせが入っている処方で強力に発汗させようとしています。麻黄の有効成分であるエフェドリンが入っているため気管支拡張作用を有しています。
      麻黄と杏仁の組み合わせが入っている処方で鎮咳祛痰作用を示す。
    3. インフルエンザウイルスの増殖抑制効果が報告されてから多く使われるようになった。

覚え方:魔王(麻黄)は魔境(麻黄・杏仁)の警官(桂皮・甘草)。

葛根湯(かっこんとう):1

  • 桂皮(けいひ) 芍薬(しゃくやく) 大棗(たいそう) 生姜(しょうきょう) 甘草(かんぞう) 葛根(かっこん) 麻黄(まおう)
    1. 自然発汗がなく頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う比較的体力のあるものの次の諸症:
      感冒、鼻かぜ、熱性疾患の初期、炎症性疾患(結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、乳腺炎、リンパ腺炎)、肩こり、上半身の神経痛、じんましん
    2. 麻黄湯で説明した麻黄と桂皮の組み合わせ。

小青竜湯(しょうせいりゅうとう):19

  • 麻黄(まおう) 芍薬(しゃくやく) 細辛(さいしん) 乾姜(かんきょう) 甘草(かんぞう) 桂皮(けいひ) 五味子(ごみし) 半夏(はんげ)
    1. 水様の痰、水様鼻汁、鼻閉、くしゃみ、喘鳴、咳嗽、流涙:
      気管支炎、気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、感冒
    2. 身体の外側に出ている症状を取り除き、不要な痰飲(たんいん)を捌く薬。
    3. 青竜は麻黄のことを示しています。

小柴胡湯(しょうさいことう):9

  • 柴胡 黄芩 人参 半夏 甘草 生姜 大棗
    1. 上腹部がはって苦しく、舌苔を生じ、口中不快、食欲不振、時により微熱、悪心などあるものの次の諸症:
      諸種の急性熱性病、肺炎、気管支炎、気管支喘息、感冒、リンパ腺炎、慢性胃腸障害、産後回復不全。慢性肝炎における肝機能障害の改善

禁忌:インターフェロン製剤との併用

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半夏瀉心湯(しゃしんとう):14

  • 半夏 黄芩 黄連 乾姜 甘草 大棗 人参
    1. みぞおちがつかえ、ときに悪心、嘔吐があり食欲不振で腹が鳴って軟便または下痢の傾向のあるものの次の諸症:
      急・慢性胃腸カタル、醗酵性下痢、消化不良、胃下垂、神経性胃炎、胃弱、二日酔、げっぷ、胸やけ、口内炎、神経症
    2. 人参 + 乾姜 で消化管が冷えて腹痛を伴うものを治してくれる。乾姜は生姜を蒸して乾燥させたもので生姜よりも温める効果が強くなり、下痢や便秘、腹痛に効かせる。
    3. 抗がん剤による口内炎に対して使われることがある。ごく少量の水と混ぜて患部に塗布すると効果が得られる。無理そうであれば水で溶いたもので含嗽し飲み込むとよい。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう):16

  • 半夏 茯苓 厚朴 蘇葉 生姜 
    1. 気分がふさいで、咽喉、食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う次の諸症:
      不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声、神経性食道狭窄症、不眠症

抑肝散(よくかんさん):54

  • 蒼朮 茯苓 川芎 釣藤鈎 当帰 柴胡 甘草
    1. 神経がたかぶるものの次の諸症:
      神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症
    2. 睡眠薬はちょっと…って方に使われたりします。眠くならないので高齢者の転倒のリスク回避ができます。
      認知症周辺症状(BPSD:せん妄、抑うつ、興奮、俳諧、睡眠障害 など) の軽減効果が期待されて使用されることが増えました。
    3. 漢方で肝臓は怒りの感情と関係しているとされています。疲労やストレスなどにより

釣藤散(ちょうとうさん):47

  • 石膏 釣藤鈎 陳皮 麦門冬 半夏 茯苓 菊花 人参 防風 甘草 生姜
    1. 慢性に続く頭痛で中年以降、または高血圧の傾向のあるもの

五苓散(ごれいさん):17

  • 白朮 茯苓 沢瀉 猪苓 桂皮
    1. 口渇、尿量減少するものの次の諸症:
      浮腫、ネフローゼ、二日酔、急性胃腸カタル、下痢、悪心、嘔吐めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病
    2. 殆どが利水生薬で構成されています。身体の水分の偏在を正してくれる効果があります。
      下腿に過剰であれば浮腫に、消化管内に過剰であれば下痢や胃内停水を起こします。頭痛やめまいは頭の方の水分が過剰になっている。口渇は咽頭部の水分の不足と考えられる。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう):41

  • 黄耆 蒼朮 人参 当帰 柴胡 大棗 陳皮 甘草 升麻 生姜
    1. 消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症:
      夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症
    2. 人参 + 黄耆 で参耆剤と呼ばれ、強い補脾胃(消化機能を助ける)・補気作用となる。

六君子湯(りっくんしとう):43

  • 甘草 人参 茯苓 蒼朮 生姜 大棗 陳皮 半夏
    • 胃腸の弱いもので、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいものの次の諸症:胃炎、胃アトニー、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐
  • 四君子湯(しくんしとう)に陳皮、半夏を加えた処方。
  • 四君子湯の覚え方は…

芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう):68

  • 芍薬 甘草
    1. 急激におこる筋肉のけいれんを伴う疼痛、筋肉・関節痛、胃痛、腹痛
    2. 甘草を大量に使用すると平滑筋の弛緩作用があり、こむら返りやしゃっくり(横隔膜の痙攣)を治してくれる。
    1. 甘草が大量に含まれていることから偽アルドステロン症への注意が重要な薬。
  • 覚え方:名前そのままなので割愛。

大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう):84

  • 大黄(だいおう) 牡丹皮(ぼたんぴ) 桃仁(とうにん) 冬瓜子(とうがし) 芒硝(ぼうしょう)
    1. 下腹部痛があって、便秘しがちなものの次の諸症:
      月経不順、月経困難、便秘、痔疾
    2. 大黄と芒硝の組み合わせで強力な瀉下作用を示す。

大建中湯(だいけんちゅうとう):100

  • 乾姜 人参 山椒 (膠飴)
    1. 腹が冷えて痛み、腹部膨満感のあるもの
    2. 全て温める生薬で構成されていて、半夏瀉心湯でもあった人参 + 乾姜 の組み合わせで消化管の冷えからくる痛みなどを軽減してくれる。(膠飴は乾姜と山椒に対する矯味目的だったりするので入っていなかったりする。)

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腎虚に使われるシリーズとしてセットで覚えておきたいところ。

腎は成長、発育、生殖を司り、体内にある水分を代謝する。
腎の精気が不足している状態を腎虚と言い、成長障害・むくみ・耳鳴り・聴力低下などの症状が出現する。

六味丸:地黄 山薬 山茱萸 茯苓 沢瀉 牡丹皮

八味地黄丸(はちみじおうがん):7

  • 地黄 山薬 山茱萸 牡丹皮 茯苓 沢瀉 附子 桂皮
    1. 疲労、倦怠感著しく、尿利減少または頻数、口渇し、手足に交互的に冷感と熱感のあるものの次の諸症:
      腎炎、糖尿病、陰萎、坐骨神経痛、腰痛、脚気、膀胱カタル、前立腺肥大、高血圧
    2. 六味丸に 附子 と 桂皮 を追加した方剤。
      附子と桂皮の組み合わせが入ったので温める力が追加され、。

牛車腎気丸(ごしゃじんきがん):107

  • 地黄 山薬 山茱萸 牡丹皮 茯苓 沢瀉 附子 桂皮 牛膝 車前子
    1. 疲れやすくて、四肢が冷えやすく尿量減少または多尿で時に口渇がある次の諸症:
      下肢痛腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難頻尿むくみ
    2. 八味地黄丸に牛膝 と 車前子が追加した方剤。牛膝という生薬が加わったことにより作用点が下半身へ向かっています。

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漢方を学んでいる薬剤師
"元"漢方薬・生薬認定薬剤師です。
漢方の魅力に取りつかれ漢方の魅力を発信しようと決意し、漢方のブログを書き始めました。
初心に帰って再度漢方を学んでいる真っ最中なので同じように漢方勉強したい方や漢方が気になる方に少しでも情報を届けられたらと考えています。
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