よく使われる漢方薬
厚生労働省データベースの令和2年度の漢方製剤処方量から抜粋してきました。
よく処方されている漢方薬という事はそれだけ皆さんが飲んでいるという事で、どんな薬か知りたいという事だと思います。であればピックアップして書いておく意味はある。
大建中湯(だいけんちゅうとう):100
- 蜀椒2 乾姜5 人参3 膠飴10-20
腹部が冷えて痛み、おなかが張ったような状態を治してくれる。術後の腸管麻痺や術後癒着性イレウスなど西洋医学的にも有名。
消化管が冷えている状態なので胡椒(蜀椒)・乾姜を入れて温めてあげる。消化管機能が低下しているので人参・膠飴で補気しつつ消化管機能を助ける。
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう):68
- 芍薬5~6 甘草5~6
こむら返りを訴えるとまず間違いなく処方される。しゃっくりにも使われる。
平滑筋の弛緩作用により筋肉の痙攣を抑えて治す。
何が怖いっていうと頓服で効果得られるものを1日3回処方されてその通りに飲んでいる人が多いこと。甘草が大量に含有されているため長期間投与されると偽アルドステロン症を発症する可能性あるため注意が必要。
抑肝散(よくかんさん):54
- 蒼朮4 茯苓4 川芎3 釣藤鈎3 当帰3 柴胡2 甘草1.5
なんかイライラ、悶々と考え込んでしまうような人に。ドキドキしなくなるので落ち着いて眠れたりします。睡眠薬ではないので、日中眠くなることもないです。人前で何かするときに緊張してしまう人は1時間くらい前に頓服しておくと気持ちが楽になります。
子供に対して癇の虫がって使われていた処方。→つまり夜泣き。
認知症の周辺症状を軽減してくれることでも有名になった。
→肝のたかぶりを抑えると書く…。高齢になって腎虚が進んだことが病態の背景にあるのか…。
葛根湯(かっこんとう):1
- 葛根4~8 麻黄3~4 桂皮2~3 芍薬2~3 大棗3~4 生姜1~2 甘草2
風邪の初期症状に。ずっと出ているなら肩こりに使っていることが多い。葛根が入ることによって頚部の血流改善効果が出てきて長期処方されていることはよく見る。
六君子湯(りっくんしとう):43
- 人参4 甘草1 茯苓4 白朮(蒼朮4) 陳皮2 半夏4 生姜0.5 大棗2
疲れやすい、元気が出ない、食欲がない、胃痛や嘔吐がする などに使う。
グレリンという食欲増進作用のある物質が発見されたことを受けて食欲が湧かない方に使われることが多くなりました。
四君子湯の加減方で、半夏と陳皮が追加されている。四君子湯 + 二陳湯との合方ともいえる。
五苓散(ごれいさん):17
- 蒼朮3 茯苓3 沢瀉4 猪苓3 桂皮1.5
片頭痛に効く薬として使われている印象。某CMで有名になったのかも。二日酔いの飲兵衛さんにも有名だったりする。
構成生薬は利水薬ばかりであり体内の水分バランスを整える効果がある。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう):41
- 黄耆3~4 甘草1.5 人参4 升麻0.5~1 柴胡1~2 陳皮2 当帰3 白朮4 <生姜0.5~0.7> <大棗2>
元気の出る薬。
なにか元気出る薬ない?って聞かれたら答えるか悩む薬の一つ。
黄耆 + 人参 で参耆剤なんて呼ばれ方をするセットが含まれている。
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん):107
- 地黄 山薬 山茱萸 沢瀉 茯苓 牡丹皮 桂皮 附子 牛膝 車前子
頻尿を訴えると処方してもらう薬。
八味地黄丸(八味丸)に牛膝と車前子を加えた加減方。八味地黄丸の証より下腿の浮腫などあること多い。最近は抗がん剤による神経障害に対して処方されていることもある。
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん):62
- 防風1.2 川芎1.2 当帰1.2 芍薬1.2 大黄1.5 薄荷1.2 麻黄1.2 連翹1.2 芒硝0.7~1.5 石膏2 黄芩2 桔梗2 滑石3 甘草2 荊芥1.2 山梔子1.2 生姜0.3~1.2 <白朮1.2>
某CMで内臓脂肪が取れます!とやせ薬と勘違いされている子。
数年単位で処方出しっぱなしになることが多い。山梔子が含まれていて5年ほど続けると腸間膜動脈硬化症という副作用を起こすことがあると報告あり。
加味逍遙散(かみしょうようさん):24
- 当帰3 芍薬3 茯苓3 白朮3 柴胡3 甘草1.5~2 生姜0.5~1.5 薄荷1 牡丹皮2 山梔子2
月経期、更年期のイライラ、ホットフラッシュなどに使われる。
逍遥散に牡丹皮・山梔子を加味した方剤。当帰芍薬散より…
八味地黄丸(はちみじおうがん)/[八味丸](はちみがん):7
- 地黄6 山薬3 山茱萸3 沢瀉3 茯苓3 牡丹皮2.5 附子0.5 桂皮1
こちらも頻尿に使われることが多いかも。某メーカーがCMやらDMで宣伝しまくって認知度が上がって医師に処方依頼しているケースをよく見る。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう):16
- 半夏6 厚朴3 茯苓5 生姜1~1.5 紫蘇葉2~3
ヒステリー球(梅核気)が出現しているような人に使える。表現が独特なんだけども…炙った肉が喉にへばりついたような感覚、つっかえ感、呼吸困難感を訴える。
体験談:本人的には喉の違和感を訴えるけどPPIやH2Blockerでは改善しないし、咽頭カメラなどでも物理的な閉塞もなく異常はないと診断されていた。ヒアリングをしてヒステリー球と判断。採用薬になかったので医師の許可を得て市販のものを家族に買ってきてもらい、服用して1回で著効した。実はすごい即効性のある漢方薬の一つ。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):23
- 当帰3 芍薬4~6 白朮4 茯苓4 沢瀉4~5 川芎3
月経痛が酷いなど女性に使われることが多い。妊娠中にも使える安胎薬。男性にも使われることあり。
四物湯から地黄を抜いて、四苓湯から猪苓を抜いて合方するとできる方剤。補血して利水する薬。利水薬が3つも含まれているため過剰な湿痰の偏在を正してくれる。