ストレス・自律神経の乱れに効く漢方薬
季節の変わり目になると、なんとなく気分が落ち込んだり、イライラしたり、夜眠れなくなったり…。
「病院で検査しても異常はないのに、なんだか調子が悪い」そんな経験はありませんか?
それは、自律神経が乱れているサインかもしれません。
自律神経の乱れは、西洋薬だけでなく漢方薬でも改善が期待できる症状の一つです。
ただ、漢方薬は「自律神経失調症にはこれ!」と一つに決められるものではなく、**症状の出方や体質によって選ぶ処方が変わってくる**のが特徴です。
この記事では、現役の薬剤師である私が、自律神経の乱れに使われる代表的な漢方薬を、症状別・体質別に分かりやすく整理してお伝えします。
季節の変わり目になぜ自律神経が乱れるのか
・春や秋など、季節の変わり目は1日の寒暖差や気圧の変化が大きい時期です。体はその変化に対応しようとして、交感神経と副交感神経の切り替えを頻繁に行います。
・この切り替えが追いつかなくなると、自律神経のバランスが崩れて、さまざまな不調が出てくるのです。
・東洋医学では、自律神経の乱れを**「気(き)の巡りの乱れ」**として捉えます。「気」はざっくり言うと、体を動かすエネルギーや精神活動のもとになるもの。
・この「気」の流れが滞ったり、逆流したり、不足したりすることで、心と体に不調が現れると考えるのです。
漢方で自律神経の乱れを4タイプに分けて考える
・漢方では、自律神経の乱れを大きく4つのタイプに分けて捉えます。自分がどのタイプに当てはまるかを意識しながら読み進めてみてください。
①気滞(きたい)タイプ:「気」が滞っている
ストレスで「気」の流れが詰まっているイメージ。喉のつかえ感、胸のつかえ、ため息が多い、イライラ、お腹の張りなどが特徴です。
②気逆(きぎゃく)タイプ:「気」が上に突き上げている
本来下に降りるべき「気」が逆流しているイメージ。のぼせ、動悸、頭痛、急に汗が出る、感情が高ぶりやすいなどが特徴です。
③気虚(ききょ)タイプ:「気」が足りない
「気」のエネルギーそのものが不足しているイメージ。疲れやすい、気力が出ない、声が小さい、食欲がない、風邪をひきやすいなどが特徴です。
④血虚(けっきょ)タイプ:「血」が足りない
「気」を支える「血(けつ)」が不足し、心の栄養も不足しているイメージ。不安感、不眠、めまい、肌や髪のパサつき、月経のトラブルなどが特徴です。

実際にはこれらが複合して現れることがほとんどですが、**「自分の症状はどのタイプの傾向が強いか」**を考えることで、合う漢方薬が見えてきます。
症状・体質別|自律神経の乱れに効く漢方薬6選
イライラ・のぼせ・PMSが気になる方に:加味逍遙散(かみしょうようさん)
- 体力が中くらい〜やや低めの女性
- イライラ、のぼせ、肩こり、月経前の不調がある
- 気分の浮き沈みが激しい
加味逍遙散は、女性の自律神経の乱れにもっともよく使われる処方の一つです。「気」の巡りを良くしつつ、「血」を補い、こもった熱を冷ます働きがあります。
特にホルモンバランスの変動による不調と相性が良く、PMSや更年期の症状にもよく用いられます。
👉 詳しい解説はこちら:女性の心と体を整える漢方、加味逍遙散とは?
喉のつかえ・喉の違和感がある方に:半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
- 喉に何かが詰まったような違和感がある
- ストレスで気分が塞ぎ込みやすい
- 不安感や動悸を伴うことがある
半夏厚朴湯は、典型的な「気滞」タイプに使われる処方です。喉の異物感は東洋医学で「梅核気(ばいかくき)」と呼ばれ、ストレスで「気」が詰まったときに現れる代表的な症状とされています。
不安神経症や軽い抑うつ傾向があり、喉や胸につかえ感がある方に向いています。
👉 詳しい解説はこちら:あなたの喉の不快感、半夏厚朴湯が解決します
不眠・動悸・神経過敏で体力がある方に:柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
- 比較的体力がある
- ストレスで眠れない、動悸がする
- 神経が高ぶってイライラする
柴胡加竜骨牡蛎湯は、自律神経の乱れに使われる漢方の中でも比較的しっかり効くタイプの処方です。「気逆」を鎮め、上に突き上げた「気」を降ろす働きがあります。
体力が中等度以上あり、ストレスで神経が過敏になっている方に向いています。逆に、虚弱体質の方には合わないことが多いので注意が必要です。
不眠・神経過敏で体力がない方に:桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
- 体力が低下している、疲れやすい
- 不眠、動悸、不安感がある
- 子どもの夜泣きや夜尿にも使われる
同じ「竜骨・牡蛎」が入った処方でも、こちらは虚弱体質向け。体力がなく、神経が過敏になっている方の不眠や不安に使われます。
「柴胡加竜骨牡蛎湯を試したけど合わなかった」という方は、こちらが合うかもしれません。**同じ症状でも体力によって処方を切り替える**のが漢方の面白いところです。
神経の高ぶり・怒りっぽさが強い方に:抑肝散(よくかんさん)
- イライラしやすく、感情のコントロールが難しい
- 些細なことで怒りっぽくなる
- 不眠や歯ぎしりがある
抑肝散はもともと小児の夜泣きや疳の虫に使われていた処方ですが、現在は大人の神経の高ぶりや認知症の周辺症状にも幅広く使われています。
「肝(かん)」の高ぶりを抑えるという名前の通り、感情を穏やかにする働きが特徴です。
👉 詳しい解説はこちら:不眠やイライラにサヨナラ!抑肝散で心身のバランスを整える
不安・疲労・気力低下が強い方に:加味帰脾湯(かみきひとう)
- 疲れやすく、気力が出ない
- 不安感が強く、寝付きが悪い
- 物忘れや集中力の低下を感じる
加味帰脾湯は、「気虚」と「血虚」の両方に対応する処方です。心と脾(消化機能)の両方を補うことで、消耗した心身を立て直していきます。
ストレスで体力も気力も削られて、何もやる気が起きない…そんな状態の方に向いています。
自律神経の漢方、選び方の3つのポイント
①自分の体力レベルを見極める
漢方では「実証(体力がある)」「虚証(体力がない)」という体力の見極めがとても重要です。同じ症状でも、体力レベルによって選ぶ処方が変わります。
たとえば不眠ひとつとっても、体力がある方には柴胡加竜骨牡蛎湯、体力がない方には桂枝加竜骨牡蛎湯や加味帰脾湯、というように使い分けます。
②一番つらい症状から考える
複数の症状がある場合は、**「今、一番つらい症状」**を軸に処方を選ぶと選びやすくなります。
喉のつかえが一番気になるなら半夏厚朴湯、イライラが一番つらいなら加味逍遙散、というイメージです。
③服用期間の目安を知っておく
自律神経の乱れに使う漢方薬は、生薬の数が多く、効果が出るまで時間がかかる傾向があります。**目安は1ヶ月程度**。
1ヶ月飲んでも変化がない場合は、合っていない可能性があるので、薬剤師や医師に相談してください。
逆に、合う漢方薬に出会えたら、数日〜2週間ほどで「なんとなく楽になってきた」という実感が出てくることも多いです。
漢方とあわせて取り入れたい養生

漢方薬を飲むだけでなく、生活習慣を整えることも自律神経の乱れには大切です。
難しいことは必要ありません。次のだれでも出来る簡単な3つだけでも意識してみてください。
- 朝、太陽の光を浴びる
- 体内時計をリセットし、自律神経の切り替えをスムーズにしてくれます。
- ぬるめのお湯にゆっくり浸かる
- 38〜40度のお湯に10〜15分。副交感神経が優位になり、夜の眠りも深くなります。
- 「気」を巡らせる軽い運動を習慣に
- ウォーキングやストレッチなど、軽く息が上がる程度の運動が「気」の巡りを良くしてくれます。
季節の変わり目は、無理をしないこと自体が大事な養生です。
まとめ
| タイプ | オススメ方剤 |
| イライラ・のぼせ・PMS | 加味逍遙散 |
| 喉のつかえ・不安感 | 半夏厚朴湯 |
| 不眠・神経過敏(体力あり) | 柴胡加竜骨牡蛎湯 |
| 不眠・神経過敏(体力なし) | 桂枝加竜骨牡蛎湯 |
| 神経の高ぶり・怒りっぽさ | 抑肝散 |
| 不安・疲労・気力低下 | 加味帰脾湯 |
