西洋医学と漢方はどう連携できるのか

現代医療との上手な付き合い方
はじめに:治らない不調に、もうひとつの視点を
「病院で薬はもらっているけど、ずっと体がだるい…」
「検査では異常なし。でも毎日、なんとなく不調。」
そんな声を、薬局の現場でたびたび耳にします。
多くの方が受けているのは、いわゆる「西洋医学的な治療」。
確かに即効性があり、検査値にもとづく明確な治療や処方ができるという点では非常に優れています。
でも、“未病(まだ病気ではないが不調がある状態)”や、慢性的な体質の偏りには限界があることも事実です。
そんなとき、もうひとつの選択肢として注目されるのが「漢方」です。
現代医療(西洋医学)と漢方(東洋医学)は、しばしば対立するものと見なされがちですが、上手に組み合わせることで、お互いの弱点を補い合える強力なパートナーになります。
本記事では、両者の違いや併用のメリット、実際の使用例などをわかりやすく解説します。
西洋医学と漢方、それぞれの強みと役割
比較項目 | 西洋医学 | 漢方(東洋医学) |
---|---|---|
アプローチ | 病名診断・標的治療 | 症状・体質・全体バランスを診る |
処方の考え方 | 原因に直接作用する成分を投与 | 体全体を整えて症状を改善する |
即効性 | 高い(症状を急速に抑える) | 穏やかで持続的な効果 |
主な対象 | 急性期疾患・外科的病態など | 慢性症状・体質改善・未病対策 |
たとえば、風邪で発熱した場合、西洋医学は解熱剤で熱を下げます。
一方、漢方では「風寒(ふうかん)」か「風熱(ふうねつ)」かを見極め、体を温めて発汗させるなど、症状の背景にある体の状態「証(しょう)」にアプローチして治療します。
私たち薬剤師の視点から言えば、どちらが優れているということではなく、「役割が違う」というのが本質です。
なぜ「併用」が有効なのか?
- 現代医療には即効性や科学的根拠の明確さという強みがありますが、「病名がつかない不調」や「慢性的な体質の偏り」には限界もあります。
- そこで注目されているのが、西洋医学+漢方のハイブリッド治療。以下のようなケースで、両者の連携が特に有効です。

風邪やインフルエンザ後の体力低下→補中益気湯
- 抗ウイルス薬や解熱剤で症状はおさまったものの、倦怠感が続く。
- これは「気虚」のサイン。エネルギーを補う処方で回復をサポートします。

胃腸の不調・食欲不振 → 六君子湯
- ストレスや薬の副作用で食欲がないときにも使われます。
- 脾(消化機能)を整えて胃腸を元気にします。

生活習慣病や更年期障害の補助療法 → 加味逍遙散、桂枝茯苓丸など
- 薬物療法に加えて、漢方で体質改善や自律神経調整を図ります。


がん治療中の副作用対策 → 半夏瀉心湯・十全大補湯など
- 抗がん剤の副作用(吐き気、倦怠感、口内炎など)に対して、漢方で緩和。
- 副作用の緩和により治療プロトコールが完遂でき、治療効果を増強できます。


漢方薬はどこで手に入れる?医師に相談するべき?
保険適用される漢方もある
- 病院やクリニックで処方される漢方薬は、医療用漢方製剤として保険が適用されるものが多くあります。
- 体質や症状に合わせて医師が処方してくれるため、まずは相談してみましょう。
市販の漢方薬(OTC)も選択肢
- ドラッグストアで購入できる製品もありますが、自分の体質に合わないと効果が出ないことも。
- 漢方に精通した薬剤師のアドバイスを受けながら選ぶのがおすすめです。
併用時の注意点は?
成分の重複に注意
- 西洋薬と漢方薬のなかには、似た作用をもつものがあります。
- 肝機能や腎機能に負担がかかる可能性もあるため、自己判断での併用は避けましょう。
服用タイミングに気をつける
- 漢方は空腹時に飲むことが多く、西洋薬とは服用タイミングが異なる場合があります。
医師や薬剤師に必ず報告する
- 「漢方薬だから別に言わなくても大丈夫だろう」という考え方で伝え漏れると思わぬ副作用に見舞われます。
- 必ず飲んでいることを伝えるのが安全のカギです。
まとめ
両方の”いいとこ取り”で健康を支える
漢方と西洋医学、どちらも長所と短所があり、補い合える存在です。
薬剤師として私が日々感じているのは、“選ぶ”より“活かす”という視点の大切さです。
不調に対して「どちらの薬が効くか」ではなく、「どちらも取り入れて、自分に合う形に整える」。
これが、より健康に、そして快適に暮らすための近道だと思います。
おまけ:よくある質問(Q&A)
Q:漢方薬はいつまで飲めばいい?
→慢性症状には2〜3か月継続して体質を整えるのが一般的です。
→→即効性を求めるものは数十分で効くため頓用で十分な漢方薬もあります。
Q:妊娠中でも飲めますか?
→ 処方によります。妊娠中には禁忌の漢方薬もあるので必ず医師・薬剤師に相談を。
→→妊娠中に飲んでもいい薬もモチロンあります!!!
Q:飲み合わせで問題になるケースは?
→小柴胡湯とインターフェロンや葛根湯などの麻黄を含有した方剤とエフェドリンを含有した製剤などは要注意です。
→→複数漢方薬を服用による甘草重複からの偽アルドステロン症なども要注意です。
