漢方の勉強、覚えることが多すぎて挫折しそうなあなたへ|遊びながら学べるカードゲームを作りました

漢方の勉強を始めてみて、こう思ったことはありませんか?
「思っていたよりずっと難しい」 「覚えることが多すぎて追いつかない」 「教科書を開くのが、正直しんどい」
私自身、まだ漢方の道を歩み始めたばかりの初学者です。日々の業務の中で覚えていくことの多さに、正直、頭を抱える日もあります。
「勉強しなきゃ」と身構えると、途端に苦痛になる。でも「遊んでいるだけ」と思えたら、続けられるかもしれない。
そんな思いで、遊びながら漢方が学べるカードゲームを作りました。今回は、そのお試し版を公開したのでご紹介します。
「学んで効く!漢方カードバトル」お試し版、遊べます
まずは、こちらから無料で遊べます。PC・スマホどちらからでもアクセスできて、一人でも二人対戦でも遊べます。

構想を温めはじめてから、およそ1年。長く頭の中で寝かせていた企画が、ようやく形になりました。

なぜ、薬剤師がゲームを作ったのか
きっかけは、私自身の学習体験でした。
漢方の世界は、覚えるべきことがどこまでも広がっています。生薬の性味・帰経、方剤の構成と適応、証の見立て、加減方の考え方、古典の背景……。ひとつを覚えても、その隣にまた新しいテーマが待っています。
日々の薬局業務をこなしながら、これを片手間で覚えていくのは、正直きつい。
でも、ふと思ったんです。「勉強」というフレームでやろうとするから苦しいのであって、「遊び」のフレームでできたらどうだろう? と。
たとえば、患者さんの訴えを読んで「これは柴胡剤かな」と考えて、手元にある生薬を組み合わせて方剤を組み立てる。それって、ゲームで言えばパズルを解いているのとよく似ています。実務の思考プロセスそのものが、ゲームになりうる。
「症状を読み、証を見立て、方剤を組む」。この漢方の本質的な思考の流れを、そのままカードゲームにしたら――そう考えて生まれたのが、この作品です。
どんなゲームなのか
ざっくり言うと、こんな流れで遊びます。
① 症状カード(患者さんの訴え)が提示される
たとえば、こんな症状カードが出てきます。
風邪が長引き、食欲がなく口が苦い。寒気と熱っぽさが行ったり来たりします。
薬剤師や医師の方なら、この文章を読んで「往来寒熱、口苦、食欲不振……小柴胡湯だな」と思考が動き出したはずです。このゲームは、その思考の流れをそのまま体験するものです。

② 手札の生薬カードを組み合わせて、方剤を組み立てる
手札には「柴胡」「半夏」「黄芩」「人参」「甘草」「大棗」「生姜」……といった生薬カードが配られます。それぞれのカードには、性味(温/寒/平)と帰経(気/水など)が明記されているので、証を見立てながら選んでいきます。
③ 「この方剤で提出」して、証と合っていれば得点
組み上がった方剤を提出。証に合致していれば得点が入ります。早く組めるほどボーナス、薬味数が多いほどもボーナス、と、「思考の速さ」と「知識の深さ」の両方が得点になる設計です。
そして、この診療プロセスは、まさに漢方の実務そのもの。遊びながら、実際に薬剤師や医師が頭の中でやっていることを、体験できます。
学びと遊びを両立させるための工夫
このゲームで一番苦労したのは、「ゲームとしての面白さ」と「学習効果」の両立でした。学習に振り切りすぎると勉強アプリになってしまうし、ゲームに振り切りすぎると学びが残らない。この綱引きを、今もずっと調整しています。
現時点で入れている工夫を、いくつかご紹介します。
難易度が段階的に調整できる

初期設定は「おまかせ」モードで、選んだテーマをクリアするのに必要な最低限のカードだけがデッキに入ります。上級者は「各3枚」に切り替えて、余計なカードも混ざったデッキで挑戦できます。同じゲームで、初学者からベテランまでが楽しめる設計を目指しました。
「薬瓶に確保」で、実臨床の感覚を再現
一度組み立てた方剤は「薬瓶」に保存でき、次のお題でも使えます。これは実務で「常備している薬から出す」感覚に近く、単発の暗記ゲームではなく継続的な思考のリソース管理を体験できるようになっています。
補助カードで、ゲーム性を担保
「収穫カード」で山札から生薬を指名して手札に加えたり、「大収穫カード」で捨て札をリセットしたり。運と戦略のバランスを取るための補助システムも入れています。今後は「お邪魔カード」も追加予定で、対戦時の駆け引きがより深くなります。
世界観にもこだわりました
背景に薬棚や生薬瓶を配置し、木目調のテーブルに書物と巻物、脇には黒猫が佇む。漢方の世界に没入できるビジュアルを目指しました。個人的にはこの黒猫、けっこうお気に入りです。
お試し版に収録している内容

今回のお試し版では、以下の3テーマ・9題を収録しています。
・かぜ(表〜少陽) : 葛根湯・麻黄湯・麦門冬湯
・婦人(血の道) : 当帰芍薬散・桂枝茯苓丸・加味逍遙散
・補剤(虚証) : 六君子湯・補中益気湯・人参養栄湯
急性期の風邪、女性の不調、慢性的な虚弱――臨床でよく出会う3領域をひととおり体験できる構成にしています。
補足すると、「加味逍遙散」については、以前ブログで詳しく解説した記事がありますので、ゲームで気になった方はぜひあわせて読んでみてください。
これからの展望
今公開しているのは、あくまで「お試し版」です。SNSで遊んでもらい、皆さんからのフィードバックを集めるために公開しました。
「ここが分かりにくい」「こんな機能があったら」「この方剤も入れてほしい」――どんなご意見でも、ぜひお寄せいただければ嬉しいです。
現在制作中の本作では、以下のような拡張を予定しています。
- 保険収載の漢方薬(148処方)をすべて網羅
- そこから派生する方剤も順次収録
- 対戦時の駆け引きを深める「お邪魔カード」の追加
- より戦略性を高めるカードシステムの整備
本作の公開形式は、サブスクにするか買い切りにするか、現在検討中です。制作を継続するモチベーションを保つため、ある程度の対価はいただく予定ですが、お試し版の範囲でも十分に遊べる内容にしていますので、まずは気軽に触ってみてください。
こんな方に、遊んでみてほしい
このゲームは、こんな方に特におすすめです。
薬剤師・薬学生の方へ 方剤の構成と証をつなげて覚えるのに向いています。ペーパー試験の暗記だけでは掴みにくい「使い分けの感覚」を、遊びながら身につけられます。
医師・医学生の方へ 症状 → 証 → 方剤の思考プロセスを、実践的に体感できます。漢方外来の入り口として、あるいは日常診療で漢方を扱ってみたい方の橋渡しに。
漢方に興味がある一般の方へ 「症状から漢方を選ぶ」という発想そのものが、日常の体調管理の視点を変えてくれます。専門用語もヒント付きなので、初学者でも楽しめます。
さっそく遊んでみる
PCでもスマホでもアクセスできて、無料で遊べます。ソロプレイなら一人でじっくり、対戦モードなら家族や職場の同僚と一緒に。まずは「かぜ」テーマから、5分ほど遊んでみてください。
遊んでいただいた感想は、ぜひSNSやコメントで教えてください。
おわりに
漢方の勉強は、ゴールの見えない旅のようなものです。
でも、旅を苦しいと感じたら続きません。歩き続けるために、途中でちょっと遊びを混ぜてもいいはず。むしろ、遊びの中でこそ、教科書を眺めているだけでは得られない気づきがあるかもしれません。
このゲームが、あなたの漢方への一歩をちょっと軽くしてくれたら、作った甲斐があります。

一緒に、漢方の道を歩いていきましょう。
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